“科学のお姉さん”五十嵐美樹さん②「私は科学と社会を結ぶきっかけを創る、コミュニケーションのお姉さんです。」
“科学のお姉さん”五十嵐美樹さん②「私は科学と社会を結ぶきっかけを創る、コミュニケーションのお姉さんです。」
「科学のお姉さん」として全国各地でサイエンスショーを主催し、数多くのメディアに出演する五十嵐美樹さん。今回は、前回に引き続き、今考えていること、今後やってみたいことなどをお聞きします。彼女が言う“科学”をビジネスの「ツール」や「商材」に置き換えると、我々はここまで目的意識を持って突き詰めてきたか、ちょっと自分のことを省みてしまいます。やっぱり、五十嵐さんは“お姉さん”です(笑)
【プロフィール】
五十嵐 美樹
1992年東京都、生まれ。
上智大学理工学部機能創造理工学科卒業(物理学専攻)。2018年4月より東京大学大学院 情報学環・学際情報学府に進学し、科学コミュニケーションを専攻、科学技術インタプリタ―養成講座第14期生。上智大学在学時に「ミス理系コンテスト」でグランプリを獲得後、子どもから大人まで幅広い層に向けた実験教室やサイエンスショーを全国各地で主催、講師を務める。Great Explorations in Math and Science取得。
■科学好きな女の子をサポートしたい
—昨今、理系女子が話題になっていますが、圧倒的にパイは少ないと思います。女子の理系への参加も狙っているのでしょうか?
それが今の私の一番の関心事項ですね。理系に進んでほしい!とは全く思ってないのですが、興味があっても「数学ができないから……」と諦めてしまう女子が多いのかなって個人的に思っていて。もしそれで悩んでいる子がいたら、どういう風に自分が役立つかな、相談に乗れるかなと思ったりしています。私自身が与えられることとして、エンジニアとしての経験と今こういう活動をしているという事例があるので、それを知っていただくことで視野が広がるきっかけになればいいなと思っています。
—今後、そのために何かしていきたいことなどはありますか?
現状としては、女の子が気軽に参加できる科学実験教室を企画し、そこで講師もやって、といったことを行っています。先日アメリカの大学で同じ趣旨の活動をしている団体の協力もさせていただき、海外含めて色々なものを見た上で実践していければ、と。
仮説として、場があることで人々が入りやすくなるんじゃないかなと考えていて、それが今やっているサイエンスショーかもしれないし、自分がメディアに出ることで女の子が興味を持つかもしれない。手段は決めていないのですが、いろいろなアプローチはしていこうと思っています。
それこそコミュニケーションが大事だなと思うので、「実験の模様を見てください」ということで本当にいいのか、メディアに出ることがいいのかなとか、そういうことは常に考えていますね。
■科学と社会の架け橋になるために
—五十嵐さんがやりたいことはコミュニケーションの勉強ですよね?
そうですね。かといって脳科学などではなく、もっと社会とのブリッジを横断的に見ていくことにとても興味があります。脳の構造として、このコミュニケーションがこのシナプスを動かして……といったことではなく、社会から見てコミュニケーションがどう機能するのかというか。
心理学や統計、科学教育などいろんな分野も絡んでくるので、それをまとめてやろうというのが学際情報学府っていうところなので、広い範囲をぐるぐる回るのが自分の役割かなと思っています。
—大学から院に進まれている方と、五十嵐さんのように社会を経験されている方の比率はどうですか?
実感としては3分の1くらいの人が社会を経験されていると思います。年上の方も多く、社会で20年働きましたみたいな人とか、その上でそれを成果として深めたいという思いで来られてる方もいますし。それは少し驚きましたが、学びたい思いがあればいろんな人が行けるというのは、私にとってもありがたかったです。
—今後、BOTやAIで何かをしたいと思っていることありますか?
私のワークショップでもAIに関連するプログラムを行ってみたいと思っていて、どういう表現をしたら子供たちがどんなリアクションを取ってくれるのか、とても関心があります。たとえば、海外でエンジニアリングを学べる女子向けのキットがあるんですけど、そのAIの仕組みをどうすれば子供たちに端的に表現できるだろうとか、試行錯誤しています。
—科学のお姉さんと言いながら、“コミュニケーション”のお姉さんですね。
そうなると一番嬉しいんですけど(笑)、今はまだ自分も勉強中の身なので。私は実践を通じて得たことを披露するという係なので、そこをうまく役立てられるといいなと思います。
撮影:宮前一喜